1975年~少年たちが見た熱い夏 - 赤ヘル1975(講談社)重松 清
赤いヘルメットにCのマーク。赤ヘルといえば広島カープの愛称である。
鯉の季節は5月まで。毎年そんな風に例えられるように、4月5月は調子が良いが、次第に降下し、安定の5位前後のポジションでシーズンを終えるというのが常だ。
最後に広島が優勝したのは1991年と、だいぶ昔の話になってしまうが、他の大きなスポンサーがついている球団と違い、あくまでも市民球団として頑張っている姿が広島の人間を熱くさせるのだと思う。
1975年は、そんなカープが初優勝を遂げた年である。
それは、本拠地広島に原爆投下がされてから節目30年の年であった。
物語は表紙に描かれた3人の野球少年の友情物語として進んでいく中で、広島の優勝に湧きながらも常に隣にある原爆の苦しみが同時に描かれる。
当時を知っている人間には一つ一つの時代背景が懐かしく、そうでない世代には昔の良さとともに、忘れてないけない大切なことを教えてくれる一冊。
著者は隣県出身だそうですが、原爆と共に生きてきた市民、県民たちの想いが広島弁ですっと心に響いてくる。
普段聞き慣れない言葉は多くとも、読みにくさを感じさせないのはさすがの重松清。
さて、ところで今年のカープは6月現在2位を走っている。
この本を読むと20数年ぶりの優勝を願わずにはいられなくなる。