読んだ本について僕の語ること

読んだ本について僕の語る書評ブログです。読書を通じて勉強になったこと、腑に落ちたこと、思い出したこと、エピソード、連想されるもの、感想を書いています。

一流に触れる - 達人に訊け! (新潮文庫)ビートたけし

達人に訊け! (新潮文庫)

僕は普段、社内のパソコンの前に座って作業をしている。
デスクワーク。人と話したりする機会は少ない。

だからこんな風に、“すごい人”の考え方を、本ででも得られるのはとても貴重なことのように思う。

ビートたけしとその道のプロ。
活躍の場は違えど、一流同士。
同じレベルで話が通じ合っている。

■ 僕らはみんな虫なんだ
虫の達人 奥本大三郎

・たけし
だいたい人間が想像できるような組織の作り方や戦争の仕方まで、
すべて既に昆虫はやってるんですね。

・奥本
人間の思いつくようなことは大体あります。
むしろ、人間の科学が進んできて、虫がやっていることの意味がようやく少し分かってきたと言ったほうが正確ですね。

■ 「勝つ」って虚しいことなんです
麻雀の達人 桜井章一

・たけし
将棋の羽生さんも将棋は絵だと言っていましたよ。
自分に合う絵なら勝てるけど、調子の悪い絵は劣勢だから、自分にとってのいい絵にしていこうとすると、やっぱり絵なんだね。
漫才でも、頭の中に絵がない奴はだめ。
言葉でやろうとしても面白くないんだ。
自分の中で、面白い絵があればワーッとしゃべっていけるけど、
絵がなくて言葉が優先すると、何をやっていいかわからないことが多いね。

■ 数学者は美しいのがお好き
数学の達人 藤原正彦

・たけし
「映画における因数分解」と言っているんです。
aという殺し屋がxとyとzを殺すという話を式にすると、ax+ay+azという式で表せる。
この場合は、映像的にはaがxを拳銃で撃つと、次のシーンではaがyを撃って、
また次にはaがzを撃つ。
近代映画における因数分解は、aが拳銃を持って、ただ歩くだけ。
次のシーンで、x、y、zの死体を順番に見せる。
それでaが3人を殺したってわかる。
つまり、a(x+y+z)となるわけ。
それが因数分解的な映画表現。

■ 不潔だから健康なんだ
寄生虫の達人 藤田紘一郎

・藤田
何でこんなに抗菌グッズが流行っているかというと、「きれい」のほうが商売になるからです。

■ 女性は香りで男を選ぶ
香りの達人 中村祥二

・アラミスはいい香りですね。
あれは「レザー・タバコ」という特徴のある香りで、専門的にはシプレータイプの香りです
(シプレーは香水の名。この種のタイプを代表する総称として使用されるようになった)。
アラミスは場合によっては、女性がカジュアルな服装の時にちょっとつけるのも素敵ですね。

■ 真似できないものを作れなきゃ
金型プレスの達人 岡野雅行

・岡野
「おまえね、女性歌手でも顔がいい、スタイルがいいというだけで紅白出られるとは限らないんだよ。インチキな女ほど出ちゃう。それと同じで、この業界も、頭がよくて腕がよくても、成功するとは限らない。だから、やめたほうがいいんじゃないか」
と言ったんだけど、それでも
「是非、やらせてくれ」
って言うんで、
「それじゃあ、やりなさいよ」って。

***

あとがきにはこうあった。

今の時代、何をやっていいのか分からない人や、自分の仕事のおもしろさに気づかないで終わってしまう人がたくさんいるのに、この人たちは、自分が本当に好きなことを見つけて、なおかつその楽しさを発見できた。だから徹夜なんかもいくらしたって平気で、とことん夢中にもなれる。そういう自分の転職に気づく、本当の運があった人たちなんだね。

やりたいことがあるなら、まずそのやりたいハシゴに届く位置まで、とにかく一所懸命に上るしかない。

あらゆる方法を使って晴れ舞台に上がる努力をして、それでなおかつ成功を収めて、
はじめて「達人」なんだ。大変なことだよ。

 

達人に訊け! (新潮文庫)

達人に訊け! (新潮文庫)