切ない心情が繊細な言葉で書かれた物語 - 乳房 (講談社文庫)伊集院 静
切ない心情が繊細な言葉で書かれた物語が読みたくなって探した。
いろんな検索キーワードを駆使して辿りついたのがこれだった。
(どの記事に載っていたか、どんな風に紹介されていたかは忘れてしまった)
短編5編を収録。
表題作の『乳房』は、気付けば物語に入り込んで、あっという間に読み終えていた。
とても感動的であった。
夫が妻を思い、妻が夫を思い、何を言葉にして、何を伝えようとするのか。
期待していたとおりの繊細な物語だった。
伊集院静の元妻であった夏目雅子がモデルではないかとも言われているらしく、そう思って読んでみるとまた趣がある。
表題作の『乳房』しか読んでいないが、十分満足した。
切ない心情が繊細な言葉で書かれた物語が読みたくなったらぜひ手にとってみてほしい。
妻と病室の窓から眺めた満月、行方不明の弟を探しに漕ぎ出た海で見た無数のくらげ、高校生に成長した娘と再会して観た学生野球……せつなく心に残る光景と時間が清冽な文章で刻み込まれた小説集。表題作の他「くらげ」「残塁」「桃の宵橋」「クレープ」と名篇を収録し、話題を呼んだ直木賞作家の、魂の記念碑。