読んだ本について僕の語ること

読んだ本について僕の語る書評ブログです。読書を通じて勉強になったこと、腑に落ちたこと、思い出したこと、エピソード、連想されるもの、感想を書いています。

小説・文学

切ない心情が繊細な言葉で書かれた物語 - 乳房 (講談社文庫)伊集院 静

『乳房』伊集院静108円(中古・ブックオフ)。 切ない心情が繊細な言葉で書かれた物語が読みたくなって探した。いろんな検索キーワードを駆使して辿りついたのがこれだった。(どの記事に載っていたか、どんな風に紹介されていたかは忘れてしまった) 短編5…

絶対買おう - 俺はその夜多くのことを学んだ (幻冬舎文庫)三谷 幸喜

いつか買いたいなと思って、本屋に寄るたびに探していた。Amazonで買えばいいんだけど、一度ぱらっと立ち読みぐらいしてから買いたい。なかなか置いている本屋はないだろうと踏んでいたけど、本当になかなかない。京阪モールの紀伊国屋書店で見つけたときは…

初体験 - 伊豆の踊子 (新潮文庫)川端 康成

中学の時に、読書感想文の題材として読んだ。内容は覚えていないけど、全部読めて嬉しかった、ということだけ記憶に残っている。 これが読みやすかったのか、その時の自分のモチベーションが高かったのか。それまでも何度か読書感想文の宿題が出て、その度に…

せっかくのタイミング - 国境の南、太陽の西 (講談社文庫)村上 春樹

「国境の南、太陽の西」を立ち読みした。 今まで村上春樹の作品をいくつも読んだが、ほとんど途中でやめてしまっている。最後まで読めた作品でも、面白かったものはひとつもない。なのに、何度も違う作品を買っては読もうとする。何故、彼がそんなに人気があ…

読後の爽快感がやみつきに。 - ルーズヴェルト・ゲーム (講談社文庫)池井戸 潤

2014年春にTBSでドラマ化された「ルーズヴェルト・ゲーム」。 弱小の社会人野球チームを舞台とした、男たちの汗と涙の熱いストーリーです。 作者は池井戸潤氏。 彼の名前が広く世に知られるようになったのは「半沢直樹」でしょう。この「半沢直樹」シリーズ…

1975年~少年たちが見た熱い夏 - 赤ヘル1975(講談社)重松 清

赤いヘルメットにCのマーク。赤ヘルといえば広島カープの愛称である。 鯉の季節は5月まで。毎年そんな風に例えられるように、4月5月は調子が良いが、次第に降下し、安定の5位前後のポジションでシーズンを終えるというのが常だ。 最後に広島が優勝したのは1…

500円から始まる芸人のストーリー - メリーランド(講談社)畑野 智美

畑野智美が描く、「南部芸能事務所」シリーズの第2弾であるこの「メリーランド」。この作品から読んでも問題なく楽しめますが、出来れば1弾から読むことをお勧めします。 南部芸能事務所に所属する芸人が、己の未来に試行錯誤しながら歩んでいく、というスト…

おっさんも3匹寄れば… - 三匹のおっさん (文春文庫)有川 浩

今年、2014年の1月からドラマ化された事でも有名な三匹のおっさんは、アラ還というおっさんのなかでもおっさんな世代が巻き起こす痛快な事件の数々を記した小説である。 「ジジイと呼ぶな、おっさんと呼べ」と語る三人は、定年を迎え、自らの場所を探すべく…

プライドのしのぎ合い - 震度0 (朝日文庫 よ 15-1)横山 秀夫

阪神大震災の前日のN県警警務課長失踪に端を発する、警察庁キャリアと地元ノンキャリアとの意地の張り合いが、ストーリーの緊張感を生む。お互いに踏み込まれたくない領分がある。出世のために、地方警察勤務時代の失点を防ぎたい警察庁キャリアと、現場の捜…

まんざら - 四十一番の少年 (文春文庫)井上 ひさし

10歳のとき、両親が離婚した。 それからすぐに僕と母親は不動産屋を回り、家を探しはじめた。ある不動産屋が、しつこく母親を食事に誘った。僕は、すごく嫌だった。なんとなく母親がまんざらでもなさそうな感じを出しているのも嫌だった。「ぜったい行かんと…

シブがらず - 一握の砂・悲しき玩具―石川啄木歌集 (新潮文庫)石川 啄木

ある時、石川啄木でも読んでみようか、という気が起こった。「短歌の世界がわかるって何かシブい」と思ったのだ。 さっそく本屋で立ち読みをした。ぜんぜん面白くないと思ったので、やっぱりやめた。 それから数年たち、いま石川啄木を読んでいる。これがむ…

ブック・オブ・ジ・イヤー2009 - 邂逅の森 (文春文庫)熊谷 達也

年間400冊読む、という人から紹介いただいた。2009年の年末のことだ。その年に読んだ本で、一番良かった、とのこと。 早速、本屋に行き、立ち読みをした。少し難しそうに感じた。僕に読めるだろうか、と思った。せっかく紹介してもらったのだし、読めなかっ…

漱石批判 - 文鳥・夢十夜 (新潮文庫)夏目 漱石

文鳥 “飼っている文鳥に餌をやらずに死なせてしまうが、家の人のせいにする話” というあらすじを聞いて、これは面白そうだ、と読んだ。 ところが、面白くなかった。 なんじゃそりゃ!しょーもな! と思った。 夢十夜 “これだけは読んどけ”みたいな小説として…

プールで泳ぎたい - イン・ザ・プール (文春文庫)奥田 英朗

「イン・ザ・プール」を読んだ。 めちゃくちゃ面白かったので「イン・ザ・プール」を読んでいる途中で、続編の「空中ブランコ」を買った。 「イン・ザ・プール」を読み終えるやいなや、「空中ブランコ」を一気に読んだ。「空中ブランコ」もとても面白かった…

付け焼刃 - ラインマーカーズ―The Best of Homura Hiroshi (小学館) 穂村 弘

大阪に雪が降った。 積もる勢いの本格的な雪だった。 街には傘をさす人とささない人は半々くらいで、それぞれの傘と肩にはうっすらと雪がのっていた。傘をさすのかささないのか、みんな雪に慣れていないから戸惑っているのだろう。 明日の朝起きて積もってい…

沖田派 - 燃えよ剣(新潮社)司馬 遼太郎

好きな歴史上の人物は誰か 入社間もない頃、同期3人で社長室へ。 「これから頑張りたまえ」社長からの激励の後、「好きな歴史上の人物は誰か?」という話題に。 まず僕が「千利休です」、同期二人が「織田信長です」「坂本龍馬です」と答えた。 社長は「土方…

淡々とドライすぎず甘すぎず深くやさしく幸福な詩 - プーさんの鼻 (文春文庫) 俵 万智

半分くらい読んだ。 最後まで読んだら、もう一度読み返そうと思っている。 俵万智といえばサラダ記念日だが、それよりも甘ったるくなくて、良い。 淡々と読まれた詩は、深く静かで優しく、幸福感が伝わる。 生まれてくる息子に詠んだもの、結婚する弟に詠ん…

めちゃくちゃ変なやつだけど - 二〇〇二年のスロウ・ボート (文春文庫) 古川 日出男

リズム感いっぱいの歯切れの良い文章でぐいぐいと物語に引き込まれた。 登場するすべての人はクセが強く個性的。めちゃくちゃ変なやつだけど、どこか憎めなくて魅力的にさえ思う。 特に包丁を振り回す女子高生料理人は、実際にいたら恋をしてしまいそうだ。 …