読んだ本について僕の語ること

読んだ本について僕の語る書評ブログです。読書を通じて勉強になったこと、腑に落ちたこと、思い出したこと、エピソード、連想されるもの、感想を書いています。

まんざら - 四十一番の少年 (文春文庫)井上 ひさし

10歳のとき、両親が離婚した。

それからすぐに僕と母親は不動産屋を回り、家を探しはじめた。
ある不動産屋が、しつこく母親を食事に誘った。
僕は、すごく嫌だった。
なんとなく母親がまんざらでもなさそうな感じを出しているのも嫌だった。
「ぜったい行かんといてな」と言った。

かけがえのない自分の母親が、他の男にとっては雌でしかないと気づくことぐらい、男の子にとって、忌々しい話はない。

四十一番の少年の、この一節を読んで、そんなことを思い出した。

児童養護施設に入所した中学生の利雄を待っていたのは、同部屋の昌吉の鋭い目だった―辛い境遇から這い上がろうと焦る昌吉が恐ろしい事件を招く表題作ほか、養護施設で暮らす少年の切ない夢と残酷な現実が胸に迫る珠玉の三編。著者の実体験に材をとった、名作の凄みを湛える自伝的小説。 

四十一番の少年 (文春文庫)

四十一番の少年 (文春文庫)