オグルヴィ&メイザー - ある広告人の告白(海と月社)デイヴィッド・オグルヴィ
世界120か国で事業を展開する広告会社「オグルヴィ&メイザー・ワールドワイド」の創業者であるデイヴィッド・オグルヴィが、自身の経営哲学や広告理論・手法について記した「ある広告人の告白」。
書かれたのは1960年代ですが、現代の広告ビジネスでも必要とされる重要なメッセージが数多く出てきます。
[第1章 広告会社の経営手法]より
今日(こんにち)、オグルヴィ&メイザーの誰かが「約束の期日までに広告やTVCMができない」などと言うのを耳にした暁には、私は激怒する。たとえどんな苦労や残業を強いることになろうとも、一流の会社では約束は常に守られるのだ。
私は上司にへつらうご機嫌とりを軽蔑する。そういう輩こそ、たいてい部下には辛くあたるものだ。
[第2章 クライアント獲得の秘訣]より
(創業して間もない)広告会社にとって最初のクライアントを捕まえるのは最大の難関だ。信用を証明するものもなければ成功したという実績もない、その評判すら誰も聞いたことがないからだ。この段階ではクライアントになってくれそうな会社の事業に関して試験的な調査を行うという先行投資をするのも効果的だ。こうした調査結果をお見せしますと言われて、好奇心をそそられない経営者はほとんどいない。
(クライアント獲得の秘訣について)ひとつだけ、ほぼあらゆるケースに通用する戦略がある。それは「しゃべりはクライアント候補に任せる」ことだ。聞き役にまわればまわるほど、“敵”にはあなたが賢く見える。
広告会社は、クライアントにサービスしすぎて破綻するか、逆にサービスしなさすぎて切られるかの間で、きわどいバランスをとりつつ綱渡りをしている。
私はいつもクライアント候補に対して、我が社にはごく小さいながら致命的な弱点があることを告白する。骨董屋に「家具に傷があるので注意してください」と言われると、その骨董屋のことをすっかり信用してしまうのに気づいたからだ。
[第3章 クライアントとの関係を持続させるには?]より
私は「他のクライアントとの先約があるから御社の販売会議には出られない」などとは決して言わない。何人もの妻とうまくやっていくためには、どの妻にも「自分こそが唯一の恋人なのだ」と思わせることだ。
広告会社にとってもっとも恐ろしいことは、クライアントとのつながりを、たった一人の個人的な絆に頼ることだ。(中略)将来にわたって仕事が保証されるのは、あらゆるレベルでクライアントとつながっているときだけだ。
間違いをしでかした場合には、まずそれを認めること、それもクライアントから非難される前に認めることが大事だ。
(プレゼンにおいて)発表者が気をつけるべきなのは「声を出して読んでいる間、印刷されたテキストから決して目を離させないこと」だ。聴衆に目と耳の両方から内容をたたき込むのだ。(中略)ある言葉を目で追っている間に、別の言葉が耳から入ってくると、受け手は混乱して集中力をそがれてしまう。
[第6章 「強烈なコピー」作成法]より
何を言っているかわからないヘッドライン(キャッチコピー)を書かないこと。つまり、その後のボディコピーを読まなければ何の意味もないようなヘッドラインのことだ。そんなものを見て次を読む人はいない。
コピーには常に推薦文をつけておくべきだ。(中略)どんなタイプの広告主も悩みは同じ。それは、どうすれば信じてもらえるのか、という一事につきる。
[第7章 人を惹きつけるイラストレート法]より
レイアウトは、常にそれが掲載される印刷物を具体的にイメージしてデザインすること。印刷物に貼り込まれたときにどう見えるか確認するまではOKを出してはいけない。
[第10章 一流の広告人への道案内]より
受け持った取引先については誰よりも詳しくなろうと決意することだ。たとえばそれがガソリン会社なら、石油製品に関する化学や地質学、流通についての教科書を読む。(中略)クライアントの精油所や研究所に行ってみる。クライアントの競合他社の広告を研究する。
クライアントとは友達になれ。自分も彼らのチームの一員であるかのようにふるまうことだ。
チャーチル元首相が広告について語った言葉
最後に、イギリスのチャーチル元首相が広告について語った言葉を引用している部分があるので紹介しておきます。
広告は人々の消費力を育てる。広告のおかげで、人は自分や自分の家族のためによりよい家やよりよい服装、よりよい食事といった目標を立てることができる。それぞれがもっと努力し、生産力を上げるよう拍車をかけてくれるのだ。
- 作者: デイヴィッド・オグルヴィ,山内あゆ子
- 出版社/メーカー: 海と月社
- 発売日: 2006/06/15
- メディア: 単行本
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