“そもそも”論 - 巨象も踊る(日本経済新聞社)ルイス・V・ガースナー
著者は、1993年から2002年までIBMのCEOを務めたルイス・ガースナーという人。
就任当時、経営破綻の崖っぷちにあったIBMを数年でV字回復させ、アメリカを代表する経営者として名を馳せた人です。
この本は、著者がCEO就任から再建までの道のりを綴った回顧録なのですが、コンピュータ企業の戦略だの何だのを読んでいても、正直よく分かりません。
と思ってテキトーに読み進めていると、どんな組織にも共通するありがたい話が後半にありました。
第Ⅲ部「企業文化」という項目で、就任当時のIBM社内にはびこっていた官僚的で内向きな風潮について、次のような言葉で語っています。
(IBMは)内向きの成長を続け、内部の規則や争いに熱中してきたため強さが失われていた。外部からの攻撃には極端に弱くなっていたのだ。
一般的に顧客のニーズに無関心で、社内政治に没頭する傾向があった。
官僚組織は社内各部門の協力を促すのではなく、縄張りを守るようにできていた。
この状況に立ち向かうべく、著者が取り組んだことが「原則による指導(リーダーシップ)」という章に書かれています。
「プロセスではなく、原則で」みたいなことは他の経営者もしばしば口にすることなんですが、要は「そもそも何が大事なのか」ということですね。
「今までこうやってきたから」とか「あの人にお伺いを立てないといけないから」
といった理由で、組織がいつまでも変わらない、というのはよくある話なんですが、「そもそも、今、何が重要なのか」という点に従って物事を考えれば、自ずと組織は変わるはず、という話です。
この章の中では、著者が注目した「そもそも重要なこと」についての考え方が書かれているので、いくつか紹介します。
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●市場こそが、すべての行動の背景にある原動力である。
企業の成功は何よりも顧客との関係の成功によってもたらされるのであり、それ以外ではありえない。
●顧客満足度が高くない企業は、財務面でもその他の面でも成功を収められない。
●どの立場でどの仕事をしている社員でも、全体の中での自分の位置と自分の仕事の重要性を認識していなければならない。
●官僚制と縄張り争いを終わらせるには、当社がチームワークを、とりわけ顧客への価値の提供に専念したチームワークを大切にし、それに報いることを全員が認識するようにするのが最善の方法である。
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最後に、著者がCEOに就任した最初の会見で“求める人材”について語った言葉を紹介しておきます。
問題を解決し、同僚を助けるために働く人材を求めている。
社内政治を弄する幹部は解雇する。
- 作者: ルイス・V・ガースナー,山岡洋一,高遠裕子
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
- 発売日: 2002/12/02
- メディア: 単行本
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